治療目標とは
治療目標とは
乾癬性関節炎の治療目標として、病気の勢い(疾患活動性)のない状態である『寛解』を目指すことが理想です。しかし、多くの患者さんではその達成が難しいため、『最小疾患活動性(MDA)』や『低疾患活動性(LDA※)』が目標にあげられています1)。ここでは、MDAについて紹介します。
※ low disease activity
1) 日本皮膚科学会ガイドライン:乾癬性関節炎診療ガイドライン2019,日皮会誌,129,13:p2695(2019)
MDA(Minimal Disease Activity)とは
日本語にすると「最小疾患活動性」と言い、乾癬性関節炎の病気の勢い(疾患活動性)が最小で、症状がおさまっている状態です。MDAは以下の7つの評価指標で構成されています。いずれの指標も疾患活動性が弱く、症状が落ち着いているほど数値が小さくなります。7つのうち、5つを満たせばMDAとされます1)。医師と一緒にチェックしていきましょう。
1) Coates LC, et al.: Ann Rheum Dis, 69, 1: 48-53 (2010)

① 押さえたときに痛みのある関節=圧痛関節(68関節)
② 腫れている関節=腫脹関節(66関節)
医師が実際に触って診察し、カウントします。診察前にあらかじめ気になる関節を、下の図を使ってチェックしてみましょう。

③ 皮膚症状の評価:PASI又はBSAのいずれか
PASI※(乾癬の面積と重症度の指数)
全身を頭部、体幹、上肢、下肢の4つの領域に分け、それぞれにどのような症状がどのくらいの広がりであるかを評価する方法です。領域ごとに皮疹が出ている皮膚が赤みを帯びる紅斑、厚みを増して盛り上がる浸潤、その表面の白いフケのようなものが落ちる落屑の程度と大きさを点数化し、合計点数を計算します。
※Psoriasis Area and Severity Index

BSA※(全身の皮膚の面積)に占める皮疹の面積の割合
皮疹の出ている面積がBSAの何%にあたるかを計算する方法です。計算はご自身の手を使って測る方法が一般的で、手のひらと5本指の大きさが全身の皮膚面積の1%に相当すると考えて計算します。3%未満は軽症、3~10%は中等症、10%超は重症とされます。診察の前に、患者さんご自身で全身にどれくらいの広さの皮疹があるかを確認しておき、手のひら何枚分かをメモをしておきましょう。
※Body Surface Area

日本脊椎関節炎学会 日本脊椎関節炎学会 編:脊椎関節炎診療の手引き2020,診断と治療社:p80(2020)
④ 患者さんご自身による痛みの評価(VAS)
⑤ 患者さんご自身による病気の全体的な評価(VAS)
痛みや体調などの自覚症状は、「VAS」という長さ10cmのスケールを用いて評価します。現在の状態がどれくらいかを、患者さんが線を記入して示します。症状がなく、体調が良いときは、真ん中ではなく左端寄りに線を入れましょう。診察の前に、メモをしておきましょう。

⑥ 身体的な機能の評価(HAQ)
8つのカテゴリー、計20項目からなる「HAQ」という質問票に回答することで身体的な機能を評価できます。
質問ごとに0~3点の4段階で点数化し、各カテゴリーの最高点の合計をカテゴリー数の8で割った値がHAQスコアとなります。診察の前に、下の表にある質問に答えておけるといいですね。


⑦ 付着部炎
筋肉が腱に移行していき、骨に付着している部分を「付着部」といい、付着部に起こる炎症を付着部炎と呼びます。付着部の代表的なものにアキレス腱がありますが、肘や膝、かかと、足裏など、身体のいたるところに付着部はあります。MDAでは、13ヵ所について、医師が実際に触って診察し、炎症のある部位を数えます。

独立行政法人 国立病院機構 宇多野病院 webサイト
https://utano.hosp.go.jp/outpatient/other_know_rheum_08.html(2025年7月1日アクセス)
Heuft-Dorenbosch L, et al.: Ann Rheum Dis, 62, 2: 127-132 (2003)