乾癬性関節炎とは
乾癬性関節炎はどんな病気?
乾癬性関節炎は、「乾癬」という皮膚の病気に、関節の腫れや痛みを伴う「関節炎」をあわせ持った病気です。関節以外にもアキレス腱などに炎症を起こす「付着部炎」、指の腫れを伴う「指趾炎」、さらには爪にもくぼみや変色などの症状がみられることがあります。
なお、乾癬は免疫系の異常により起こる病気のため、ほかの人に感染する病気ではありません。

乾癬性関節炎では、皮膚の症状(乾癬)と関節の症状(関節炎)がみられますが、どちらの症状が先にあらわれるかは人によって異なります。「乾癬性関節炎」という名前からは皮膚の症状が先に出る印象を受けるかもしれませんが、実際には関節の症状から始まる場合や、関節と皮膚の症状が同時にあらわれる場合もあり、その割合は約30%であったとする報告があります1)。
関節の症状が先行及び関節の症状と皮膚の症状が同時にみられる例が約30%1)
目的:日本人乾癬患者における乾癬性関節炎の有病率を調査する。
対象:2003年3月~2014年2月に、3地域の三次医療機関で診察を受けた乾癬患者3,021例。
方法:多施設共同、非介入、後ろ向き横断研究。乾癬性関節炎は、リウマチ専門医が臨床所見に基づいて診断した。乾癬性関節炎の有病率、臨床的特徴、合併症、治療パターンを検討した。
限界:すべての専門医が臨床診療において必ずしも同じ分類基準を用いているわけではなく、対象集団において誤分類バイアスが生じる可能性があった。横断研究デザインに固有の限界など、多因子的な診断限界が存在する可能性がある。三次医療機関を受診した患者は、地域の皮膚科医を受診した患者よりも乾癬性関節炎の発症率が高い可能性があり、これが非鑑別バイアスの潜在的な原因となり、本研究の結果に影響を与える可能性がある。
1) Ohara Y, et al.: J Rheumatol, 42, 8: 1439-1442 (2015)
乾癬性関節炎はどんな人に多い病気?(疫学)
日本では、乾癬の患者さんが約43万~56万人1、2) いるとされ、そのうち、約14~15%3、4) の患者さんが乾癬性関節炎であると言われています。単純に計算すると、乾癬性関節炎の患者さんは日本に約6万~8万人いると推定されます。
乾癬性関節炎は男性に多く、女性の約2倍いると報告されています5)。また、乾癬の皮膚症状を発症する年齢は平均39歳、関節炎を発症する年齢は平均49歳と報告されています5)。
1) Kubota K , et al.: BMJ Open, 5, 1: e006450 (2015)
2) 照井正, 他: 臨床医薬, 30, 3: 279-285 (2014)
3) Ohara Y, et al.: J Rheumatol, 42, 8: 1439-1442 (2015)
4) Yamamoto T, et al.: J Dermatol, 44, 6: e121 (2017)
5) 山本俊幸,他:日皮会誌,128,13:2835-2841(2018)
乾癬性関節炎の症状は?
乾癬性関節炎は、皮膚や関節をはじめ、体のさまざまな場所に症状がみられます。代表的な症状は、大きく分けて6つあります(皮膚の症状、指趾炎、爪の症状、末梢関節炎、脊椎炎、付着部炎)。
また、6つの症状に加え、ぶどう膜炎、炎症性腸疾患といった、皮膚や関節とは関係のないところに、特徴的な症状がみられることもあります。
なお、症状は人によって異なり、ここに示したすべての症状がみられるわけではありません。

乾癬性関節炎の患者さんはどうなっていくの?(予後)
乾癬性関節炎は、診断や治療が遅れると、関節の変形や破壊が進行し、元の状態に戻すことが難しくなるおそれがあります。実際に、乾癬性関節炎の症状が出始めてから診断されるまでの期間が長くなると、病気の経過(予後)が悪くなるという報告1-3)もあります。そのため、できるだけ早い段階で正しく診断し、適切な治療を始めることが非常に重要です。早期に適切な治療を開始することで、症状を軽くしたり、病気の進行を食い止めたりすることが可能になります。
1) Haroon M, et al.: Ann Rheum Dis, 74, 6: 1045-1050 (2015)
2) Theander E, et al.: Ann Rheum Dis, 73, 2: 407-413 (2014)
3) Gladman DD, et al.: Ann Rheum Dis, 70, 12: 2152-2154 (2011)